同窓生の皆さまへ
猪狩 友一

同窓会会長白百合女子大学学長
猪狩 友一

 白百合女子大学同窓会の皆さま、2024年6月に学長に就任しました猪狩(いかり)と申します。国語国文学科の教員としてもう30年以上勤めておりますが、思いがけず学長(会長)となり、こうして皆さまにご挨拶申し上げることになりました。私はカトリック信者ではありませんが、この大学は、伝統あるシャルトル聖パウロ修道女会を母体とし、初代学長の三島初江マ・メールはじめ、スール方がお造りになったものですから、その建学の精神を受け継ぎたいと考えております。時代や社会の変化に応じて変えるべきところは変えなければなりませんが、根本にある本学の良さは変えてはならない、そういう思いで「変わる白百合/変わらない白百合」をコンセプトとして掲げています。
 ところで、近年、生涯学習やリカレント教育が重視されています。リカレント教育とは、卒業後に大学などの教育機関で学び直すことをいいます。すでにご存じの方が多いと思いますが、本学でも、外部の方々にも開かれた講座を実施しております。2024年度は「つながる力・つなげる力」をテーマとした公開講座、および「信じるとは...」をテーマとした宗教講座を開設します。また、リカレントとはやや違うかもしれませんが、人間総合学部では、主に地域との交流を目的とした、親子で教員や在学生と学べる・遊べるイベント「エデュテイメント大学」や、子育て支援ルーム「りすぶらん・あんふぁん」を催しています。(詳しくは大学ホームページでご確認ください。)今後は、こうしたリカレント教育的な試みを拡充するとともに、社会人となった同窓生の皆さまが、もっと気楽に本学に来ていただけるような仕組みを作って参りたいと思います。
 今本学では、キャリア教育や支援の充実を進めようとしていますが、その場合の「キャリア」とは、いわゆる就職活動等に役立つ知識や技能を身につけるというだけでなく、生涯にわたってどう生きていくかを考え、女性の生き方をエンカレッジ(励ます、勇気づける)ものと考えています。この理念は、当然在学生だけではなく、卒業した皆さまにも必要かつ有益なものです(むしろ卒業後にこそ有益とも言えるかもしれません)。現在の構想では、主に学部4年間のキャリア教育・支援なのですが、個人的には、これが文字通り生涯にわたるキャリア(生き方)教育・支援になればよいと考えます。例えば、在学生と同窓生(あるいは同窓生でなくても、問題意識を共有する社会人)が一緒に受けられる授業(遠方の方々もオンラインで参加できる)のような、新たな仕組みができればよいと思います。まだ夢の話のような段階ですが、卒業した後も、本学が生涯にわたって生きる拠り所(心の支え)になればよい、そんなことも考えています。
 先日、後楽園にある文京シビックホールにて、J・S・バッハ「マタイ受難曲」のコンサートを聴きました。本学フランス語フランス文学科の村中由美子先生が、管弦楽団マーキュリー・バッハ・アカデミーのメンバーというご縁で、聖歌隊セントポール・クワイアやOGの方々、カトリック教育センターの釘宮明美先生も合唱に参加されました。著名なソリストと合唱、管弦楽が一体となる、とても素晴らしい全曲演奏で、改めてこの曲の奥深さを味わうことができました。バッハは「通奏低音の最終目的はただ神の栄光と心の慰めである」と述べたのだそうです。本学もまた、建学の精神を通奏低音としつつ、心に響く、味わい深い音楽を奏でるような大学でありたいと願います。同窓会の皆さまのご理解とご協力を、どうぞよろしくお願い申し上げます。